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腰の痛み

「腰の痛み」は日常生活に深刻な影響を与えます

腰は上半身の重みを受ける場所であり、いわば体の大黒柱です。そのため腰に異常が起きると日常生活のさまざまな動作に深刻な影響を与えることになります。腰の骨(腰椎)の異常、腰椎を支えている周りの筋肉部の異常などは腰の痛みに直結し、さらには全身に広がってゆく神経の通り道となる脊柱管(せきちゅうかん)部分で異常が起きると、下肢の痛みやしびれ、歩きにくさ、などといった神経症状に悩まされるようになります。重度の場合には寝たきりの状態を余儀なくされることもあります。また腰は負担が大きいため痛みが慢性化しやすい場所でもあります。

整形外科を受診する理由で一番多いのは「腰の痛み」です。

腰の痛みは重労働だけが原因ではありません。腰への負担は姿勢が大きく関係します。腰は立っているときの姿勢よりも座っているときのほうがかかる負担が大きいことがバイオメカニクスの研究によって証明されています。そのため、長時間座り続けるリモートワークの増加などにより若年層でも腰痛の患者さんは急増しています。腰痛が続くと運動不足となり、体全体の筋力も低下します。その結果、肥満リスクも高まり、腰に対する負担がますます大きくなります。放置すれば頑固な痛みへと発展して、さらに治りづらい状態を招くかもしれません。一度詳細な検査を加えてご自身の状態を正しく知っておくことはとても重要なことです。異常を感じたら早期に診察にお越しください。

腰の骨(腰椎)の構造は複雑です

腰の骨のことを「腰椎」といいますが、腰椎は背骨(脊椎)の一部になります。脊椎は首からおしりまであわせて27-28個あり、これらによって私達の体が支えられています。脊椎の中には脳神経と直結する太い神経の通り道(脊柱管)があり、特に腰椎の脊柱管を貫くように走る1本の太い神経を「腰髄」と呼び、それが途中で枝分かれをして細い神経の束になったものを「馬尾神経」と呼びます。この部分に何らかの異常が起きると腰や下肢に強い痛みやしびれ、違和感が生じます。

腰に異常を生じる原因について

腰に痛みが起きる原因は大きく2つに分けられます。

骨に生じるトラブル

腰の骨を「腰椎」といいます。腰椎の変形、腰椎同士を繋ぐ軟骨(椎間板)の障害、腰椎の関節部分の異常などによって痛みを生じます。腰椎の変形には圧迫骨折も含まれますが、これは骨粗鬆症の患者さんに多くみられます。

筋肉に生じるトラブル

腹筋や背筋などの腰回りの筋肉が損傷や炎症を起こすことで痛みが生じます。
腰の筋肉の過度の疲労による異常(筋筋膜性腰痛症)や「ぎっくり腰」などがこれに含まれます。

主な症状

腰の病気や障害は、的確な診断をするためには「どのあたりが痛むのか、どんな痛み方をするのか、どのような動きによって痛みが生じるのか」といった情報がとても大切になります。下記の様な症状があれば診察時にお伝え下さい。

  • 腰が痛い 
  • 「筋肉の張り」や「筋力の低下」を感じる
  • 姿勢が悪くなった
  • お尻や太ももの痛み、しびれ
  • ふくらはぎや足の痛み、しびれ 
  • 足に力が入らなくなる、力が抜ける
  • 長時間歩くことができない、など

下肢のしびれの多くは腰から足にかけて伸びる坐骨神経が圧迫や刺激を受けることによって起こります。また、背骨の神経が圧迫を受けている実際の箇所とかけ離れた部位に痛みが表れることもあります。そのため原因究明にあたっては、腰のどの部分がどのように痛むのかなど症状を医師に詳しく伝えていただくことが重要となります。

病院に行った方がよい場合

腰痛、おしりの痛み、足のしびれなどが繰り返し現れる、またはご本人が「痛みが日常生活に支障がある」と感じるならば、すでに治療が必要な段階と考えます。病気そのものの治療に加えて、生活習慣の見直しや姿勢の改善など、根本的な部分での修正が必要かもしれません。また、安静にすべきか、逆にリハビリテーションなどを積極的に加える必要があるのかなども、専門的な知識がなければ見極めは難しいものです。症状の程度や内容によっても治療方針は大きく変わりますので、ぜひ早期の段階で一度ご相談ください。

代表的な病気

腰椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板症

腰の骨は前にある椎体と後の椎弓に分かれています。椎体と椎体の間にあるものが椎間板といわれる軟骨でクッションの働きをします。この軟骨がつぶれたり、変形すると強い痛みを生じます(椎間板症)。さらに腰に過度な負担をかけ続けると椎間板が神経の太い通り道(脊柱管)飛び出します(椎間板ヘルニア)。椎間板の飛び出しによって脊柱管内の神経が圧迫を受けると突然の強い痛みやしびれに襲われます。

症状は、腰痛、殿部痛、下肢のしびれで、進行すると下肢の筋力低下、感覚障害、歩行障害、排尿、排便障害が生じることがあります。

診断は、神経の症状をみる診察とレントゲン検査で行います。 詳細な検査としてMRIを行うことがあります。

治療は、日常生活で腰への負担を軽くするなどの安静、コルセット装着、内服薬、外用薬、ブロック注射、温熱療法、牽引療法とストレッチ、筋力回復などのリハビリテーションを行います。

腰椎椎間板ヘルニアは幅広い年齢層の方で起こりやすい疾患です。多くの場合は手術をしない保存的治療を適切に行えばよくなりますが、症状が改善されない場合や下肢の筋力低下、排尿、排便障害がある場合は手術を要することがあります。

腰部脊柱管狭窄症

脊柱管とは、腰椎の真ん中にある神経の太い通り道のことです。この脊柱管を構成している靱帯の緩みや肥厚、椎間板の出っぱり、腰椎のズレ、骨のとげが形成されるなどが原因となり脊柱管が狭くなり神経が圧迫されて生じる病気です。

長期にわたって少しずつ進行するため完治させることは難しいですが、適切な治療を行うことで症状の軽減を目指します。さらに体幹トレーニングや筋力アップなど効果的なリハビリテーションを加えて、症状が出にくい体作りを行うことも重要な課題となります。

特徴として、ある程度の距離を歩くと、殿部から膝下に痛みやしびれが生じ、それ以上歩くのがつらくなり、前かがみになって立ち止まったりしゃがんだりすると、また歩けるようになる間欠跛行が生じます。

診断は、神経の症状をみる診察とレントゲン検査で行います。詳細な検査としてMRIを行うことがあります。

治療は、日常生活で腰への負担を軽くするなどの安静、コルセット装着、内服薬、外用薬、ブロック注射、温熱療法、牽引療法とストレッチ、筋力回復などのリハビリテーションを行います。症状が改善されない場合や下肢の筋力低下、排尿、排便障害がある場合は手術を要することがあります。

腰椎すべり症、腰椎分離症

腰腰椎すべり症は、腰椎(多くは第4腰椎)が前方へずれる病気です。原因は、加齢による腰椎周囲の変性といわれ、40代以上の女性に多い特徴があります。

腰椎分離症は、腰椎椎弓(腰椎の後ろの部分)の疲労骨折と考えられ、第5腰椎に多くみられます。ジャンプや腰の回旋を行うスポーツをする青少年に腰椎分離症が多いといわれています。
症状は腰痛で、腰椎を後ろにそらせた時に強くなります。

腰椎分離症が徐々に腰椎分離すべり症に進行し,神経の症状を伴うと腰部脊柱管狭窄症となり、殿部痛、下肢痛やしびれが生じることがあります。

診断は、痛みの部位を見る診察とレントゲン検査で行います。詳細な検査として、CT、MRIを行うことがあります。

治療は、青少年で初期に発見された腰椎分離症の場合は、スポーツの中止に加えてコルセットの装着して分離部の癒合を行います。成人では痛みは軽く、日常生活の支障が小さいですが、症状が強い場合や神経の症状がある場合は手術を要することがあります。

腰椎圧迫骨折

主に骨粗鬆症が背景にある背骨(腰椎)の骨折です。骨が脆くなると、しりもちをついたり、物を持ち上げたり軽い外傷や負荷で脊椎が潰れやすくなります。時に、重度の骨粗鬆症の場合は気づかない内に潰れることもあります(いつのまにか骨折)。治療はコルセット装着による安静、内服薬,外用薬、そして原疾患としての骨粗鬆症の治療を行います。麻痺を伴う場合や痛みが改善しない場合は手術を行うこともあります

骨粗鬆症について

腰痛症(ぎっくり腰)

腰の筋肉を傷めたことで起きる疾患です。俗に言う「ぎっくり腰」がその代表格です。腰の筋肉が損傷したり炎症がおきることによって強い痛みが現れます。長時間同じ姿勢や動作の開始時(起き上がる時、立ち上がる時など)に痛みを自覚することが多いですが、何もしないで生じることもあります。

診断は、レントゲン検査では異常がないことと神経の症状がないことを確認します。

治療は、日常生活で腰への負担を軽くするなどの安静、コルセット装着、内服薬,外用薬、ブロック注射、リハビリテーションを行います。

適切な治療とリハビリテーションにより早期改善と今後の再発予防を期待できます。

坐骨神経痛

腰椎の中にある馬尾神経から枝分かれした神経が殿部にある坐骨周囲を通る時に坐骨神経という名前になります。腰椎の病気で神経が圧迫されて、殿部から大腿外側にかけての強い痛みやしびれが生じる状態を、特に坐骨周囲の殿部痛が強いことから坐骨神経痛といいます。

坐骨神経が生じる病気として、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などがあります。症状については各病気の項をご覧ください。

腰椎椎間板ヘルニアについて

腰部脊柱管狭窄症について

診断に必要となる各種検査について

診察と合わせて、レントゲンやMRIを用いて精緻に診断します。ご自身が感じている腰の症状や外見的な判断だけでは診断は難しいケースもあります。適宜画像診断も合わせて医学的根拠に基づいた客観的診断を行うことが大切です。痛みの原因が骨にあるのか、筋肉にあるのかは画像を用いることでほとんどの場合すぐに判明します。骨に異常があると分かった場合は、さらに詳しくMRIを用いて詳細な分析を行うこともあります。

レントゲン

骨の変形の有無など形状的な異常をはじめ、動作時の骨のぐらつき具合や無理な負担がかかりやすい構造になっていないかなども詳細に確認することができます。

MRI

脊柱管内部にある神経の圧迫の有無や程度、筋肉や靭帯などの軟部組織異常などを多角的に分析することができます。

骨密度検査

腰椎圧迫骨折や脊椎変形の場合、背景に骨粗鬆症が隠れている場合があります。その場合は骨粗鬆症の程度を評価した上で病気の治療にあたる必要があります。

治療について

病気の状態は様々ですが、異常が起きている箇所に対する適切な治療を加えます。

骨の異常が原因となっている場合

症状を改善するためのリハビリテーション、薬物療法をはじめ、負担を分散させるためのコルセットなどの装具治療を行います。ただ、程度が重症の場合には手術治療が必要となります。腰椎圧迫骨折や骨粗鬆症が疑われる場合には、骨密度検査も行いカルシウムなどの内服や注射による治療も重要となります。

筋肉の損傷や炎症が原因となっている場合

必要に応じて患部にコルセットを使用するなどの装具治療、消炎鎮痛剤やブロック注射などの投薬治療を用いて状態の改善を図ります。また機器を用いた治療(物理療法)による局所の炎症除去や、代謝・血行促進を行うことで回復を促してまいります。

リハビリテーション

効果的な物理療法や理学療法などを用いて、筋力アップや姿勢指導などの全身バランスの調整を行います。腰痛や腰部脊柱管狭窄症による神経痛は、体幹の柔軟性獲得や筋力を増強することで腰部の負担が軽くなり症状改善が見込めます。運動(リハビリテーション)療法は現在非常に注目されており、当院では患者さん一人ひとりの病態、状態にあったリハビリテーションプログラムを提案させていただきます。

ブロック注射

当院では各種ブロック注射を病態に応じて行っています。トリガーポイント注射は、疼痛の原因となっている場所(トリガーポイント)が分かっている場合に、その局所へ抗炎症剤を投与する注射です。坐骨神経痛に対しては、脊柱管に薬剤を注入する硬膜外ブロック注射が効果的です。神経の元となる場所にダイレクトに薬を注射して症状を和らげる方法です。どのブロック注射も外来レベルで安全に行える方法です。

当院の取り組み

当院では専門医による的確な診断のもと、リハビリテーションに力を入れて取り組んでおります。一人一人の患者さんの病態や症状にあわせてリハビリプログラムを作成し手厚くサポートいたしております。回復のペースに応じて納得度の高い診療内容を提供するように努めております。

手術を要する重症度の高い患者さんの治療はもちろんのこと、さらに専門性の高い治療を必要とされるケースにおいては、近隣の高次医療機関と密に連携し、タイミングをしっかり見極め柔軟に対応いたしております。

加えて、その方の将来を長く見据え、筋力・背筋力といった腰回りの支えをどのようにバランス良く整えてゆくのが最善策かという点にも重きを置いた診療を行っています。

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